「9月11日」

何でもないこの日付は、
2001年を境に人類にとって
忘れられない日になりました。

2001.9.11 アメリカ同時多発テロ。
その衝撃は、今でも語り継がれています。

しかし、その後3ヶ月間で起きた
ある「見えない事件」については
ほとんど知られていません。

1.　恐怖は残り、連鎖する　　　　　　　　　　　　

2004年、ドイツの教育者
ゲルト・ギゲレンツァーは
ある衝撃的な報告を発表します。

それは、2001年10月～12月の
アメリカにおける急激な
交通事故による死者の増加でした。

9.11の旅客機ハイジャックの衝撃は
航空業界に大きな爪痕を残しました。

2001年10月、11月、12月の旅客数は
前年の同月と比べ、20％、17％、12％と
減少しました。

その代わりに増えたのが、自動車移動です。

米国運輸省の発表によれば、
2001年のアメリカ全土での
自動車の走行マイルの前年からの増加比は
9月以前よりも、9月以降の方が
【3.2倍】も増えていました。

当然ながら、事故数も増えます。

2001年最後の3ヶ月間の交通死亡事故の絶対数を
過去5年間の同期間と比較すると
なんと【約350名】も増えていたのです！

なお、同時多発テロによる死亡者2,977名のうち
飛行機の乗客死亡者数は【266名】と
されています。

たった一度の衝撃的な出来事からの
感情（恐怖）が、未来にも連鎖して
より深刻な事態につながってしまう。

私たちの人生でも十分ありうることです。
その根本的な原因は何でしょう？

2.　一生続く「天国」も「地獄」もない

人間は常に未来を考えています。
そこで最も参考にしているのが、
過去の出来事の記憶です。

でもここで問題があります。

参考にしている記憶が
滅多におきるのことない
例外的だった出来事の場合が
多いのです！(9.11のように）

すると何が起きるのでしょうか？

未来の出来事の予測も
当然極端なものになっていきます。
そこから来る感情の影響の予測もまた
過大になっていきます。

この現象は、次のように呼ばれています。

もう少し身近な例をあげましょう。

「宝くじ1等が当たったら、一生天国だ！」
「今の仕事を辞めたら、一生地獄だ！」

よく言われる話です。

でも、いずれも
人生を決める一要素にすぎません。

そして、実際になってみると
人間はなんだかんだ言ってそれに
適合してしまうものです。

一生続く「天国」も「地獄」もありません。
すべてが日常になるだけです。

3.　未来の感情は、過去の感情の記憶で作られる

2005年、ハーバード大学の
キャリー・K・モレウェッジは
こんな実験をしました。

地下鉄で電車を待つ62名の乗客に
ランダムに次の3種類のいずれかの
アンケートをとります。

【タイプA】

「あなたが以前、電車に
乗り遅れた事例を
【自由に】書いてください。」

【タイプB】

「あなたが以前、電車に
乗り遅れた事例のなかで
【最悪な事例】を書いてください。」

【タイプC】

「あなたが以前、電車に乗り遅れた事例を
【3つ】書いてください。」

次に、128ミリの連続した線を示して
両端を「最悪」「最高」として
そのときの感情を数値化してもらいます。

最後に、同じ方法で
「今日この後電車に
乗り遅れた場合の気分の予測」を
してもらいました。

すると面白い結果が出ました。

4.　幸せは、参考事例の多さが決める。

いかがですか？
この結果は様々な考察を与えてくれます。

過去の出来事に向けられた感情は
この後の未来の出来事に予測される感情と
比例してつながっていること

自由に想起した場合は
極端な記憶を想起した場合と
変わらない感情を体験していること
（自由に想起している場合も）
（つい極端な記憶から思い浮かべている）
（可能性が高い）

そして、参考事例を増やして
より客観的に記憶を評価ができると
幸福度が【3倍】近く上がるということ

研究チームは他にも
ひいきのチームが優勝するという
最高な体験を思い出す実験でも
同様の現象を確認しました。

真っ白い布であれば、わずかな
シミが目につくように、
人は仲間はずれの例外ほど
意識が向いてしまいます。

目立つものが、すべてを代表している
わけではありません。

つい恐怖や不安で道を迷いそうになったら
その根拠となる記憶を見つめてみてください。
そして問いかけてみましょう。

「本当にそれだけなのか？」
「他のときはどうだったのか？」

すると、インパクトバイアスがおさえられ
自然に未来に進んでいけますよ。

本日もお読みいただき
ありがとうございました。

より着実にインパクト・バイアスを
修正し、未来への確かな目線を
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