「一体、何がしたいの？」
「なんでそんなに危ないことするの？」
「それで具体的にはどうするつもりなの？」

両親から学校の先生、
そして会社の上司まで
何かするたびに聞かれる質問です。

実は、私たち自身の脳も
何かを始める時にこの
3つの質問を繰り返しています。

そのため多くの夢や目標が
陽の目を見ないまま、無意識のうちに
消えています。

そこを上手く切り抜けるために
3つの心構えが必要です。

脳の企画会議の通し方を知って
いつでも明るい未来に前進できる
あなたになりましょう。

1.　あなたの脳の3つの企画会議

アメリカのファンタジー小説家の巨匠
パトリシア・マキリップはこう語ります。

「未来は・・・どんな未来も・・・
　単純に一歩ずつ
　心から出てくるものだった」

実はこれは脳の働きからも
正しい感覚です。

「未来を思い浮かべる」と聞けば
なにやら突然インスピレーションが
降ってくるイメージがあります。

しかし、どんな突飛なアイディアも
実は脳の中では、きちんと企画会議で
審査を受けて、登りつめてきているのです！

これが3Stepの全体図です。

１つずつ説明していきましょう。

2. 海馬の問いかけ「一体、何がしたいの？」に答える方法－「ミッション」

脳の側頭葉には、
丸まったタツノオトシゴの形をした
部位があります。

「海馬」といいます。

ここは「記憶」を司ります。
大脳皮質の嗅覚野・視覚野・感覚野及び
情動からおくられた情報の断片を集め、
整理し、保存します。

しかし海馬は、単なる倉庫番ではなく
名映像クリエイターでもあります。
必要に応じて整理した情報の断片を
再編集し、いかにも意味の通った
ストーリーにまとめあげ、
それを上映します。

これが「想い出す（想起）」ということです。

すなわち何かを想い出すとは、
完全な過去の記録の再現ではなく
その時点で再構成された新しい映像なのです。

さて、海馬はこの力を買われて
脳においては、まだ体験していない
未来のシュミュレーションの役割も
任されています。

未来の予測は、人間が生き残るために
不可欠なことです。

とはいえ、まだ起きていないことで
ある以上、予測にあたっては過去の
情報の断片の再利用をすることになります。

この時利用される情報を
「自伝的記憶」と言います。

端的に言えば、あなたの個人的な
人生を振り返って思い出される
出来事で今のあなたにつながる
意味のある記憶です。

ここから大切なことが分かります。

もちろん、映画や漫画的な突飛な
空想はいくらでもできます。

しかし、いざ自分ごととして
未来を描こうとすると、
「海馬」は過去の自伝記憶の
データを出してきて、詰めてきます。

そこで多くの人は、
「どうせ自分なんて」
「しょせん自分なんて」と
引き下がってしまうのです。

だからこそ、本気で夢を描き
未来に向かいたいときは、
まずは自分の過去の出来事の意味付けを
変えていく必要があります。

すると海馬はそれに応じて
より魅力的でスケールの広い
未来像を一緒に描いてくれます。

この行程が、「ミッション（使命）」の発掘です。

3. 前帯状皮質吻側部の問いかけ「なんでそんな危ないことするの？」に答える方法－「パッション」

あなたの額の真ん中から
2.5センチほど奥に
「前帯状皮質吻側部」
という部位があります。

読み方は、
「ぜんたいじょうひしつふんそくぶ」。

ちょっと長いため、
以下略称の「rACC」とします。

海馬の企画会議を無事通った
未来像は今度は、rACCで重要度を
ランク付けされます。

「なかなか面白いけど、今じゃないよね？」
提出された未来像の多くは、そんな感じで
お蔵入りになってしまいます。

このランク付けには、大物アドバイザーがいます。
それが「扁桃体（へんとうたい）」です。
アーモンドの形をしたこの部位は、
ちょうどあなたのこめかみの
内側にあります。

「扁桃体」は脳の最古参であり、重鎮です。
恐怖や不安などの情動を司り、
「戦うか逃げるか」という生存のための
最も大切な反応を決めています。

もし扁桃体が「なんでそんなに危ないことを
するんだ！」と反応すれば、
それは鶴の一声として、rACCは
たちまち却下を下します。

ここから分かることがあります。

もちろん、扁桃体に
悪気はありません。
すべてはあなたの命を守るためです。

だからこそ、本気で夢を描き
未来に向かいたいときは、
あえて夢を明確にし、重要度をつけ
絞り込む必要があります。

すると扁桃体は
「きちんと検討してくれた」と
安心してくれて、あなたの未来像の
実現を承認してくれます。

この行程が、「パッション（情熱）」の追求です。

4.前頭前皮質の問いかけ「具体的にどうするの？」に答える方法－「ビジョン」

さて、あなたの未来の企画会議の
最後が前頭葉にある
「前頭前皮質」です。

左の眉の中央に指をあて、
そのまま2.5cmほど上にあげたところに
あなたの左の前頭前皮質があります。

これまでの「海馬」や「扁桃体」や
「rACC」は、大脳辺縁系（通称
「哺乳類脳」）と呼ばれる領域に
あったものです。

しかし、最後の「前頭前皮質」の
ある領域は「人間脳」と呼ばれ、
脳の中では最も新しい領域であり、
成人後も最後まで成長し続ける部分です。

前頭前皮質は、あなたの人格や
ゴール達成のためのPDCA
（計画、予測、期待、調節）を
行う脳の司令塔です。

だからこそ、前向きで
新しいものを好む反面、
とてもドライで現実的です。

これまでの脳の企画会議で通った
未来像を本当に実行する計画を考え
あらゆる情報に目を光らせます。

ここで大切なのは、
「社会的手がかり」です。

現実化するのに足りる
「方法」「環境」「仲間」などの
資源が認知できてはじめて
ここまで上がってきた未来像に
OKを出すのです。

ここから分かることがあります。

どんな物的欲求も
提供してくれる他者がいなければ
叶えられませんし、許してくれる他者が
いなければ持ち続けることはできません。

だからこそ、本気で夢を描き
未来に向かいたいときは、
いかに他者に役立つかを説いて
周囲を巻き込み、協力を
求める姿勢が必要です。

すると前頭前皮質は
「これなら実現できる」と
安心してくれて、あなたの未来像を
現実化するべき目標として脳に
設定してくれるのです。

心理学者のシェーン・J・ロペスは
言います。

この行程が、「ビジョン（見通し）」の決定です。

5.　夢実現の努力は、自分の脳へのプレゼンが9割

いかがでしたか？
実はあなたが未来の
夢実現・自己実現のために
頑張る必要があるのは、
この3つの脳内会議を
通過させることだけなのです。

無事、あなたの未来像を前頭前皮質が
実現するべきゴールと認めると、
あなたの脳の大脳辺縁系はそれを
「報酬」とみなし、反応の基準にします。

すなわち、少しでもあなたの未来像の
実現に役立ちそうなものを認識したら
自然に「接近」を試みます。他方で、
あなたの未来像の実現の妨げに
なりそうなものについては自然に
「回避」を試みます。

そこには行動力も意志力も
時間管理すらも必要はありません。

実現するまで自動的に無意識に
あなたを導いてくれるのです。

世界最大の脳データベースを持つ
ブレイン・リソース・カンパニー創設者
エビアン・ゴードンは次のように語ります。

精神世界でいう
「導き」や「御加護」や「引き寄せ」は
こうした脳の原理からも
説明できるのかもしれません。

たしかに夢が大きいほど
努力は必要です。
でもその努力を向ける先には
コツがあります。

あなたの過去の意味に光を当て直す
「ミッションの発掘」と
あなたの本当に望む夢を絞り込む
「パッションの追求」と
あなたの成長と貢献の宣言である
「ビジョンの決定」。

この3つに力を注ぐことで
あなたの脳のパワーを最大限
活かすことができるようになりますよ。

本日もお読みいただき
ありがとうございました。

多くの能力開発・目標達成・自己啓発の
研修は、「ミッションの発掘」
「パッションの追求」
「ビジョンの決定」の一部しか
行っていません。でも、本日見たとおり
あなたの理想の未来の実現には
すべてのステップが必要です。

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参考文献（P.253)

参考文献（P.68、21）

参考文献（P.63～70）

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