「大丈夫、大したことないよ」
「今は別のことに集中しよう」

悩み相談でよく聞かれる回答です。
プロでも、表現は違えど言いがちです。

でも、実はとても危険なセリフです。
たとえ、相談者が一見満足した顔であっても。

1.直視VS楽観視VS気晴らし　恐怖に勝つのは・・・

カリフォルニア大学
カタリーナ・キルカンスキーによる
2012年にこんな研究を発表しました。

クモ恐怖症の88名の被験者を集めます。
クモ恐怖症テストで上位25％に入った
筋金入りの方ばかりです。
実験前には、同意書も書いてもらいました。

彼らの前に、容器に入った
大クモ「タランチュラ」を用意します。

ミッションは2つ。

1）10段階のステップを経て
　タランチュラに触れてもらう

2）大写しのタランチュラの画像を
　38秒間10回にわけて見てもらう

実験はここからです。
研究チームは、恐怖心への対応策ごとに
次の4つのグループにわけました。

A）感情を言葉であらわす
　【情動ラベリング】

クモを見た印象と感情を
思うままに否定的な言葉で
説明してもらいます。

「嫌なタランチュラが
　飛びかかってくるのでは
　ないかと不安になる」

B）再評価（問題をとらえなおす）

クモを見た印象と感情を
否定的な表現を避けて
中立的な言葉で説明してもらいます。

「小さなクモを見ても
　私には危険ではない」

C）気をそらせる

あえて恐怖の対象とは
関係のないことを考えてもらいます。

今回は、家の中にある物や家具と、
その家具が置かれている部屋や
場所を含む文章を作成して
話すように指示されました。

「書斎のソファの前にテレビがある」

D）何も対応せず、直視する

こちらは何も感情的な対策はしません。

実験は、2日間おこなわれ
さらに1週間後に追試をおこない
その変化を計測します。

被験者に0から100の数値で
恐怖度を自己申告してもらったところ
下記の変化がみられました。

これだけならば、すべての方法で
それなりに恐怖は減っていると言えます。

しかし・・・

研究チームはもう1つ別の
被験者の本心を計測する仕掛けを
設けていました。

2.恐怖から目をそらした被験者の末路

それがSCR（Skin Conductance response)
という装置です。
利き手でない手の薬指と中指に
電極をとりつけ、皮膚反応から
客観的に恐怖を計測します。

結果は驚くべきものでした。

なんと、否定的な感情を中立的な言葉に
置き換えたB）再評価（楽観）グループと
無関係なことを言葉にしたC）気をそらす
グループは、恐怖が【さらに大きくなって】
いたのです！

他方、最も恐怖心がやわらいだのは
否定的な感情をそのまま言葉に置き換えた
A）情動ラベルグループでした。

A)グループは当然ながら
B）グループと比べ【約17倍】も
不安や恐怖を言葉にしていました。

でも、そのおかげで恐怖心は
やわらいでいったのです。

3. ネガティブな感情は肯定すると、やわらぐ

「恐怖」はネガティブな感情です。
しかし、脅威を避けるあなた自身を
守るために大切な警告信号です。

それを中途半端に受け取ったり
無視すれば、ますます警告は
強くならざるをえません。

そこで大切なのは、警告信号を
しっかり受け取ったことを
自分自身に伝えかえすことです。

否定的な感情の言語化は
その最も明確な方法なのです。

そして、悩み相談の回答者の仕事は
このお手伝いをすることに他なりません。

ぜひ、あなたも否定的な感情を
そのまま言葉にして受け止めて
みてください。

さらに、もう１つご提案です。

多くの方は、こうしたあなた自身からの
大切な警告であるネガティブな感情の
意味を見ないまま忘れようとし、
さらに大きなネガティブ感情に警告される
循環におちいっています。

もし、その感情の発生した時点に
立ちかえり、きちんと意味を受け止めて
この循環を抜け出せる方法があるとしたら
興味はありますか？

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